「草原の人」



 

夢を見ました

緑の優しい夢でした

そこにはあいつが居なくって

やっぱりオレも居なくって

誰一人いなくて

空と風と草と大地がありました

















あいつは大地になると言った

ならオレは風になろう

風になって大地に根付く草をすべろう

何処までも続く大地に乗って















  オレは

     どこまでもどこもでも――――――――



















夜中に目がさめて直江は隣にいる温度を確認する

頬に触れる、髪を梳く、キスをする

あぁ、あなたが生きている

息を吐き出し安心する

「高耶さんっ…」

息と共に思いが闇に溶けていく

不安に押し潰されそうになる

――――――あなたのソコに俺はいますか?

















触れ合った風と大地

どこまでも二人なら行けると信じてた

あぁ、まるで昔からソウだったように

どこまでもどこまでも

お前と一緒にどこまでも行けた

大地のにおいが心地よい

どこまでも受け止めてくれる大地

あぁ、なんて愛しいのでしょう







    愛しいお前

    優しいお前

どこまでも受け止めてくれる腕が

   愛しくて愛しくて

    泣きたくなる

  でもオレは知っているんだ

     さよならだ、直江

     あぁ、愛している

   言葉では伝えきれない…







しかし別れの時が訪れた

風と大地は異なるもの

決して一つにはなれない

風は大地をすべりながら…

だんだんと少しづつ姿を消していった

大地はあわてて手を差し延べた

しかし思いは届かない…

大地は風を掴まえられない



風もまた大地の腕にふれられない















   消えてしまう消えてしまう

   あなたが(おまえが)

  



いなくなってしまう―――――



















再び穏やかな寝息をたてはじめたのを見計らうようにして

高耶はそっと体を起こした。

オレはお前が夜中に何度も目を覚ますのを知ってる。

まるで確認するようにオレに触れる手が、

指先が、冷たく小刻みに震えているのも知っている。

オレの消滅を恐れるお前

まるで秘め事のように

激しく静かにオレの「生」を確認して息を吐く。

ゆっくりと、搾り出すように…







                   













   悲しくて愛しくて

   涙が出た





























風が消え、そこに残ったのは大地だった。

静寂だけが支配するその空間

―――――恐いほどの無

なんの音もしない世界だった。

草が鳴くことすらせず

耳鳴りだけが支配する世界

―――静かな世界

しだいに耳鳴りは大きくなる

―――無音の大地

それは大地の言葉に出来ない慟哭













聞こえぬ耳鳴り

風の泣き声





























      

                                                                                           

                                       
03,01,05
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